【感想】和泉瑠璃「波が割れたら」

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【作品情報】

和泉瑠璃「波が割れたら

「叶わぬ恋をそれでも祈り続けた」

十二年ぶりの再会。
男は、幼馴染の女に恋い焦がれていた。彼女が結婚した後もずっと。
その彼女が、夫を亡くし、故郷へ帰ってきたことで、二人の止まっていた時間が動き出す。

深大寺恋物語 最終候補作品



【感想】

十二年振りに再会した男女の恋の物語……と書こうとして手が止まるのです。いや、恋の物語には違いない。少なくとも彼の方はずっと彼女のことを慕っている。けれど、彼女の方はどうなのか。しかし「打算的」という彼女のことば通りにも取れないし……とそこまで考えたところで、やはりこれは恋の物語と思うんです。彼女の方が彼に対して「あなたが好きで」なんてあからさまなことを言うことはできないけれど、彼と彼女には積み重ねた過去があり、二人はそれを覚えていて、そして彼女は彼を呼んだのですから。

この話登場人物二人がお互いの気持ちを隠した状態でずっと続くんですよね。だから語り手である男の方の感情も抑制されていて。でも終盤、彼女の言葉があって、葉擦れの音に波を想起した後、それが溢れ出す。私、このシーン好きで。罪の共有であり、彼女へ手を伸ばす言葉でもある。木漏れ日の中男女が話すだけなのに確かにクライマックス。そしてあっさりとした、過不足ない幕切れ。

素晴らしかったです。

和泉瑠璃「波が割れたら

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