【感想】私は柴犬になりたい「手記」

おすすめウェブ小説

【作品情報】

私は柴犬になりたい「手記

「だからなにもありませんでした」



【感想】

精神的に病的な状態にはまるきり”特殊”なものもあるのかもしれませんが、十分普通の延長線上に乗っているものも多い気がするのです。誰しもが感じるもの、想うものを、少しばかり鋭敏に、或いは少しばかりズレて心中に宿す。だから、”健常”な人は病的な人を見て、おいおいそれはないよと思いつつ、どこか自分の中にもある欠片を自覚する。結局、特殊さ、異質さを強調されがちな”病的であること”は甚だ普遍を孕むものでもあるのです。

彼女は彼女の自己認識では”病”の人ではないそうですが、”「病」と呼ばれるものを患っていると言われる”人ではあります。そして確かに(恐らくは)読者の多くが彼女に病的なものを見出します。しかし、彼女の感覚は、訴えることは、普通から伸びた先にあるものであるし、普遍を孕んでいるのです。(彼女が自分のことを病人だと思っていないのはそれも理由かもしれませんが。そして一種それは正しくもあります) 私は柴犬になりたいさんはそういうものを書くのが上手い作家さんだなと思います。

話を変えて病的なところを見ると、物凄いリアルです。私は診断も下っているので、堂々と病人を名乗りますけど、その目から見てとてもリアルでした。私達は自我の淵を見てしまうし、或いはその淵が溶けて消えて、時にはもう一人の自分であったりもする何者かと混合してしまう。そして時に、”このさきにいけばきっとかえってこれない”という所まで行ってしまいます。

神様や信仰に傾くのも大変覚えがあって、当たり前と言えば当たり前なんです。だって世界が壊れるんですから。この小説において表面的には控えめに見える神様は今の彼女と確かに結びついていて、そしてその信仰とそこに至る経緯は特殊でありつつも普遍的です。深い所で信仰の小説でした。

私は柴犬になりたい「手記

コメント

タイトルとURLをコピーしました