【講評】雪乃かぜ「波の音に染む」

web小説講評

【作品情報】

雪乃かぜ「波の音に染む

「高校2年生の夏、僕は彼女に恋をした。彼女はいつも、妄想の中に現れる。」

「名波なぎさ」さん、僕の初恋の人。

JR横須賀線の下り、逗子行き。
戸塚駅、7時40分発。
彼女は毎朝、同じ車両に座っていた。

偶然にも彼女の前に立てる日なんて、
僕にとっては、最高に特別な一日。

コカ・コーラのラベルのような赤い髪。
小さな頭には大きすぎるヘッドフォン。
白地に紺色スカーフのセーラー服。

臆病な僕は、一度もまともに、
話しかけることもできなかったけれど、

それでも高校2年生の夏。
僕は、彼女に。

──彼女に恋をしていた。
《カクヨムweb小説短編賞2020応募作品》



【講評】

こんにちは、辰井圭斗です。昨年は自主企画「辰井講評窓口」にご参加くださりありがとうございました。すっかり遅くなってしまい申し訳ありません。こちらに講評を書きます。

徹底してライトな読み口の(空想)恋愛青春小説だなと思いました。
物語の流れや”僕”の感情も分かりやすくシンプルですし、妄想で彼女を創り出すことすらきれいに纏まっており、地の文とセリフのバランスもかなり軽く、終盤実家で絵はがきを探す場面はここまでライトに書くかと少し驚きました。もちろんライトなだけでなく、疾走感のあるいいシーンでもありました。
私としては、妄想のなぎさも大人になってから会いに行くなぎさも”僕”にとって都合のいいことしか言わず、全体として薄口であるという印象を受けましたが、別にそれは悪いことではなく、それを求めている人はいるし、本作はそれに上手く応えられているのだろうと思いました。

最初、まず設定の作り方が上手いなと舌を巻きました。僕の就職先が僕となぎさが再会するきっかけでありつつ、僕のパーソナリティを表わしてもいて、更に終盤の疾走へのタメとしても機能しています。
いいなと思ったシーンはなぎさの作った砂の城が”いつのまにか何千年も前に滅びた古代の遺跡のような姿になっている”ところ。このシーンの持つ意味をちゃんと読めている自信はありませんが、単に波のせいでそうなっただけでなく、空想の中に幻想が入れ子になっているようで、空想と現実の境界を曖昧にしているような印象を受けました。

さらりとした短編でした。読ませてくださりありがとうございました。



【作者様からの返信】

あああああ・・・!
こんなにも素敵な講評、誠にありがとうございます😭
ホントにホントに嬉しいです。

執筆経験も浅く、特に何かしらの効果を狙って文体を工夫したりといったことはまだまだ出来ないのですが、この作品はなんだか登場人物たちに「こう描いてくれ」「こう言わせてくれ」と言われるがままに書き上げたような感覚を得る作品でした。

物語の半分以上が「妄想」という不思議なお話ですが、ご評価をいただけて光栄です😭

数ある作品の中から拙作を手に取って下さり、誠にありがとうございました!!

雪乃かぜ「波の音に染む

コメント

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