【講評】バルバルさん「猫の母の恩返し」

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【作品情報】

バルバルさん「猫の母の恩返し

「弱弱しい子猫が、ズボンのすそを噛んで引っ張っていた……」

少し昔の話です。あるところに女にこっぴどく振られた男がいました。
その男が戸を開けると、そこには仔猫が。
これはその子猫との出会いから始まるお話です。

(ノベルアップ+様にも投稿しております)



【講評】

こんにちは、辰井圭斗です。先日は自主企画「辰井講評窓口」にご参加くださりありがとうございました。こちらに講評を書きます。

よかったです。2つの喪失を経て、でも残されたものはあるという話。終盤までかなり忠実に昔話構造をなぞっていたなと思いました。この小説がなぞる昔話構造は「恩返し」型。
①やや不遇な主人公が人ならざるものに善行をする。
②主人公のもとに正体不明の人物がやってきてよいことをしてくれる。
③それなりに幸せに暮らす。
④正体不明の人物の正体がばれ、その人物は去る。
ストーリーラインが強固で「皆さんご存知」である分、脱線もせず読者にも話が伝わりやすかったかなと思います。

この小説にオリジナリティがあると感じた点は2点。
1点目は①の主人公の不遇を女との別れに設定し、④の流れと共通させていること。それによって話の要素が無駄に増えず、まとまりがよくなっていました。②③の流れも冒頭で女と別れ、恩返しにやって来たのも女(のかたちをとるもの)だったということから、男の行動の動機などが呑み込みやすいものになっていて上手い設定の仕方だと思いました。

2点目は最後。昔話構造に則って男は喪失を経験しますが、残されたもの(仔猫)があるというところ。これによって救いがあるというか、読み終わりが爽やかになっていました。もっとも母猫の話によれば、親子ともども馬車にひかれている筈で、ここで仔猫だけ帰ってくる論理の説明が無いので今ひとつ呑み込みづらいところではあります。

前述のようにオリジナリティはあるのですが、話の展開が「皆さんご存知」を忠実になぞる分、先はかなり読めてしまうので、全体に更にオリジナリティなり魅力なりが欲しかったなと思いました。特に②③の部分は少し中弛みしているように見えました。

時代設定も気になるところです。タグに「明治」とあるので、私は明治くらいの時代設定だと思いながら読みましたが、全員が全員読む前にタグを見るとは限らず、本文からは時代があまり分からないので、下手をすると現代の話として読めてしまいます。それでもよいなら話は別ですが、そうではなく「明治」や「少し昔」の話として読ませたいなら、「話の早い段階で」デティールによってもう少し時代を感じさせるべきだと思います。例えば服(絣を着ているとか)や家(かまどで煮炊きしているとか)などで。

しっかりとしたストーリーラインの短編でした。読ませてくださりありがとうございました。



【作者様からの返信】

読んでいただきありがとうございました!
自分としては全力をもって書いた短編だったので、良かったと言っていただき嬉しかったです。
多少気になった点があったのは力不足でしたが、次に生かしたいと思います。
では。また別の作品で出会えましたら。

バルバルさん「猫の母の恩返し

コメント

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