【講評】高村芳「花と罪悪」

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【作品情報】

高村芳「花と罪悪

「男は花を愛した。罪悪感を抱きながら。」

男は毎週花屋に寄り、花を買っていく。とある男の、罪悪ともいえる花への愛をつづった物語。

※自慰表現があります。苦手な方はご注意ください。



【講評】

素晴らしかったです。花を使った自慰というよりは、花との性行為と罪悪の物語。

冒頭から息を呑みました。世界の解像度が高かったので。読者に情景を喚起する力が強いと思います。展開されるのは落ち着いた、けれどもどこかカラフルな世界。これはすごいものを読んでいるなとこの段階で思いました。

花屋の“彼女”と「あれ、いい雰囲気なのか?」と思わせられるのは振りで、帰宅後露わになる彼が本当に愛するものと彼の愛の有り様を際立たせるものになっています。別に“彼女”のような人間と関わることもできる人だけれども、彼が愛するのは、愛さざるを得ないのは違うものなのだと。物語の序盤に自然なかたちで“彼女”を対置しておくのは本当に上手いと思います。

植物を通して語られる父母の物語もごく短い淡々としたものであるのに、確かなドラマを感じて。“僕が大学生になり家を出た頃から、実家には花が飾られなくなった”のあたりに出てくる感情の動きは胸に迫るものがありました。

帰宅後の花との性描写はただ見入ってしまうというか。見てはいけないものを見ているという感覚はあるのですけど、目を離せませんでした。愛しながら大切にしながらも、「ごめんね。でもきみが魅力的だから」と傷つけるようなこともして激しく愛していく。彼の目を通して描写される花は確かにあまりに煽情的で「こうなるのはもう仕方がない」と思わせられてしまいます。自慰描写はどれだけ生々しいものがくるだろうかとちょっと恐々読んでいたんですが、かなり抑制されていて、けれども彼の火照る身体の熱や弾む息遣いまで分かるような、そんな描写でした。圧巻とはこのことだと思いました。

そして彼の性的倒錯の由来と性交後のタケシマユリの処理。自身への嫌悪感。全体に「上品だ」と言いたいところですが、「上品だ」という言葉すらこの小説に対しては品が無いように思えるのです。やはり、落ち着いた、けれどもどこかカラフルな世界、それを見る目を通して語られる小説。この作品を読めて本当によかったです。

高村芳「花と罪悪

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