【講評】佐倉島こみかん「ケンちゃんと悪くない魔女?」

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【作品情報】

佐倉島こみかん「ケンちゃんと悪くない魔女?

「良かったねえ、少年――私が悪い魔女じゃなくて」

土曜日の中央公園には魔女が出る――小学生の間で噂になっているその『魔女』は、夕方にベンチでクレープを食べるという。チビでビビリと馬鹿にされたケンタは、その『魔女』に本当に魔女なのか聞いて、ビビリでないことを証明することになってしまった。



【講評】

キャプションの時点で好きです。実は以前(神ひな川がまだ開催されていた時?)に読んでいて、その時の感想は和田島さんと大体一緒でした。

まず小学生目線の物語をきちんと小学生目線の話として書いていることに驚嘆せざるを得ません。かなり難易度の高いことを見事になさっていると思います。決して派手なことが起こる話ではない、どちらかといえばかなり地味な話ですけど、この小学生目線への入り込みがすでに娯楽要素として機能していてそれ自体スリリングです。これはずるい。

“魔女”も絶妙なバランスで。読者には「ああ、本当は魔女ではないのだろうな」と思わせる言動をとりますが、でも全くそのことで失望させないというか、だってこの日少年である彼らにとって彼女は紛れもなく魔女ですし、読み手としても「もしかして、ひょっとして」と思う余地があって、魔法を使わない彼女に魅せられてしまっているんです。それってもう魔法のようで。個人的に今こういうのに滅茶苦茶弱いので、もう胸の辺りが大変なことになっています。

と、いうのを思い出しながら書きました。もう一回読みます…………

改めて読むとカタカナの使い方が上手いですね。子ども言葉にすると普通漢字にするところを平仮名にせざるを得ず読みやすさを損なったりするんですけど、要所要所でカタカナにすることで読みやすいし、小学生男子感が出ています。細かいところですけどすごい。

“ 魔女は、みんなが顔を出して様子をうかがっている大イチョウ木の方をちらりと見て言った。三人があわてて首をひっこめるのが見える”。ありがちな動きですが、動きの描写というよりカメラの動かし方がうまいです。ここでカメラを一旦外に動かすことで動きのない息苦しさみたいなものを感じさせないようにしています。

会話。これだけ長い会話、しかも一方、つまり“魔女”の方がかなり喋るものを捌くのは難しいはずですが、書き手の苦しさを感じさせません。こうやってデティールを挙げるときりがありません。

最後もそのよさをうまく言語化できないんですがいいなあと思いました。もう一回読めてよかったです。

佐倉島こみかん「ケンちゃんと悪くない魔女?

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