【講評】明弓ヒロ(AKARI hiro)「黄金色の髪に魅せられて」

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【作品情報】

明弓ヒロ(AKARI hiro)「黄金色の髪に魅せられて

「4万年前、あったかもしれない物語」

太古の昔、一人の少年が、少女と出会った。
全ては、そこから始まった。

※コメディではありません。SF要素もありません。ファンタジーでもありません。しいて言えば、おとぎ話です。

※最新の考古学見地を散りばめていますが、かなり脚色しています。



【講評】

なるほどおとぎ話だなと思いました。サピエンスの少年とネアンデルタールの少女が出会う4万年前のボーイミーツガール。おとぎ話性を感じるのは2点。

1つは笛や壁画、アトラトルなどのアイテムや技術。現代人にとっては(アトラトルは微妙ですが)既知のそれは、彼或いは彼女にとっては未知のものであり、不可思議かつ呪力を孕んでいるようにすら見える、ある種の“魔法”として立ち現れるものでもあります。この話はボーイミーツガールでありながら、自らの持たざる魔法との出会いでもあるように見えました。もう1つは彼らの子孫の物語。それまでとは語り方が変わり、伝説的になります。この締めくくりは彼らの前に広がる遥かな世界と時を感じさせるものでした。

全体として各話の連関が緩く、一貫した短編というよりはエピソード集のようになりがちなのを物足りなく思わないではありませんでした。彼や彼女の心の動きがもっと書かれたのならば、それが各話を貫く背骨になるのにと。しかし、恐らく明弓さんはそれを望まれないのだと思います。4万年前の彼らの心を現代人の感覚から推し量り、ストーリーテリングに用いるのならば、彼らの彼らであることは失われるのですから。本編を描く、彼らから距離をとった筆致は「清潔」なものであり、そうした書き方をする人にとってこの物語が“おとぎ話”ではなく“ストーリー”になってしまうことは本意ではないでしょう。各話の連関の緩さは本作の性質が要請するものであり、私の感じた物足りなさは本作の瑕疵たりえないのです。そう思い直して見れば、改めてよい作品だなと思いました。

本編もそうですが、この作品を読むという行為自体が面白かったです。

明弓ヒロ(AKARI hiro)「黄金色の髪に魅せられて

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