【講評】神代恭子「ちいさいあきみつけた」

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【作品情報】

神代恭子「ちいさいあきみつけた

「おいもをやくと、あったかくておいしい。」

秋の味覚といえば、おいもです。
これは、おいもにまつわる、ほんの小さなお話です。

【講評】

ミニマムないい童話だと思いながら読んでいました。ことばの使い方も一貫性があり、作品全体の雰囲気から違和感を持つようなことばが一つも無かったのは、神代さんの腕の確かさを示しているように思います。なかなかできることではありません。色彩もきれいですね。“今日はちょっとさむいけど、とてもいいお天気で、空はとてもきれいなみずいろです”のところでまずいいなあと思いました。そういえば、子供の頃空を青ではなく水色ととらえていたよななんてことを思い出しつつ、秋の空がよく表現されていると思いました。その後も“赤いはっぱ、黄色いはっぱ、茶色いはっぱ、はい色のかれえだ”、“白いマッチの先が、ぽっとオレンジ色の火にとってかわられました”など色の表現が印象的で、子供の頃の世界のものの色を一つ一つ確かめながら見ていたような、そんな感覚を思い出しました。

もうこの時点でとてもいい童話で、やきいもを食べるだけのミニマムな話だけれどもいいなあとほっこりしながら読んでいたんですが、終盤に入って息を呑みました。慌てて前の方を読み返して、確かにその設定でもお母さんのセリフが成立していることにおののきつつ最後まで読みました。登場人物の一人が実はこうでしたという話を読むのはこれが初めてではないのです。だから「こういうパターンか」と冷静に見ることもできるはずなのですが、この作品の場合純粋に「すごいものを読んだ」と思いました。理由を考えてみたのですが、やはりそこに至るまでのあまりに丹念な童話の世界があってこそそう思ったのだと思います。決して珍しくはない話の設定であるにも関わらず胸を突かれ、またその設定が単に物語の意外性を作るといった小手先のものではなく、物語全体と確かに結びついているということが好ましかったです。

講評企画をやっていてよかったと思うのはこういう作品を読んだ時です。

神代恭子「ちいさいあきみつけた

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