【講評】君塚つみき「ワン・ハンドレッド・ガール」

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【作品情報】

君塚つみき「ワン・ハンドレッド・ガール

「試験で全科目100点を取れたら」

僕は彼女と賭けをしている。
内容はシンプル。彼女が定期試験で全科目100点を取れるかどうか。
これは完全無欠な優等生との、プライドを懸けた戦いである。



【講評】

非常に明快なストーリーであり、意図的にある情報を書かないことができる小説という媒体の特性をうまく活かした作品です。

まず緑川の設定や彼女の“怪物性”に対する周囲の反応は大変分かりやすく漫画的でもあるのですが、この作品の場合全体のトーンからしてそれはよい割り切りであり、この物語に読者をうまく乗せることに成功していると思います。

第一話の放課後の展開などは学園ラブコメの王道を行くような描写でありつつ、進学の話に絡めて緑川のキャラクター性や物語を強化しています。うまいのは、ここで“僕”に些かの違和感を抱かせることで。恐らく読者はミスリードされて緑川と僕をクラスメイトであると認識しているはずですが、それにしてはここまで進学に関するアドバイスをするクラスメイトも珍しい、しかし全く有り得なくはないのかとそのくらいに思いながら読み進めます。絶妙なバランスの伏線です。

そして第二話で物語の急展開。賭けの中身が変わりますが、賭けのルール自体は変わらないので呑み込みやすく明快で、その結果に興味を持つことに集中できるようになっています。

第三話の“僕”が取った策はややずる過ぎるもので、その点はむしろ面白味が落ちてしまうのではないかと思わないではありませんが、その後明かされる“僕”の正体などの衝撃によってほとんどその辺りのことは気にならなくなりました。

最後も上品ですね。直接的には顛末を書かず、けれどもこれまでの経緯から読者にはおおむね想像がつくようになっており、満足感が損なわれていません。この物語の終わりとしてきれいだと思います。

巧い作品であると思いました。

君塚つみき「ワン・ハンドレッド・ガール

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